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叶わないならせめて、手に入らないならいっそ
第6章 傘ふたつ
焦っている俺の耳に、聞き慣れた名前が飛び込んできた。

「柊、傘忘れたの?」

びくん、となる。

いくつか人の頭を越えた向こうに、背の高いしゅーちゃんの顔が見えた。
知らない女の子に話しかけられている。

「傘、一緒に入るー?」

女の子の言葉に、俺の心臓が跳ね上がった。

それは、俺が言いたかったことだ。
鞄を握りしめた手に力がこもる。

しゅーちゃん、まさか、その子の誘いに乗ったりしないよね?
傘を貸すのは俺の役目だったよね?
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