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第9章 闇に溶ける

体が冷え切っていた。
雨が生温く感じた。

俺の体の境界が、闇そのものに溶けていく。
このまま消えてなくなってしまえばいい。

若葉と一緒にいられない世界は、空虚だ。

川の轟音に混じって、微かに耳慣れた声が聞こえてきた。

「しゅーちゃん！！」

最初は幻聴かと思った。

重い雨の中、ゆらゆらと目線をさ迷わせる。
視界の隅に、小さな人影が映ったような気がした。

「しゅーちゃん！！」

今度ははっきりと聞こえる。

若葉が土手の上を、転びそうになりながらこっちに向かってくるところだった。