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藤の舞
第12章 飢えと渇き

診察時間になっていた。

今日も動揺したまま院長と挨拶する。

「おはよう、昨日は変わったヘルプだったようだね。
楽しめたかな。」

ボクは院長のことには触れなかったのに、院長は面白そうに話題にしてくる。

「いいえ、おはようございます。」

「楽しくなかったか、」

「そんな気分じゃありません。」

「まぁ何事も経験だから…

それと、昨日はたまたま先生の方からお声かけをいただいたんだよ。

なかなか無いことだよ。
あと、研修費は私が包んであるから気にしないように…」

「研修費?」

「公開、いや、研修に参加する費用だよ。
裏サイトで勉強したまえ。」

「それは、奥さんにも渡るんですか?」

「行くわけないだろう。金銭が絡んだら法に触れるだろう?

先生の設備や機材を用意するための費用ですよ。

次、招かれたら自分で包むんですよ。」

「はい、すみませんでした。」

奥さんにお金が渡っていれば良かった。

お金の為にあんなことをしているんだったら良かった。

でもそうではない、奥さんは欲の為に病院に、自分から行っているんだ。

経験ね…

ボクは小声で呟いた。
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