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藤の舞
第13章 買い物
10分ほど行ったところに八百屋がある。
とても古く、狭い間口に軒先まで野菜が並んでいた。

並んだ品物の中に胡瓜はなかった。
そしてお店の人もいなかった。

昔ながらの店構えで、奥は自宅なのだろうか、
高台の土間になっていて、奥の窓ガラスが閉まっていた。


「ごめんください。」

声を掛けると、ガラガラと立て付けの悪そうな音がして、ガラス窓が開いた。

70才近い小柄なおじいさんが顔を出し、

「いらっしゃい。」

体に似合わない大きな声で返事をし、

「よっこらしょ…」

高い土間から降りて出てきた。

「おっ、○○病院の看護婦さんだ。新顔だねぇ…」

「初めまして…」

本当の看護婦さんも、よくお使いを頼まれるのだろうか、
ナース服に病院名は入っていないのに病院を知っていた。

「あの、胡瓜が欲しいんですが、無いみたいで…」

「あるよ。今朝市場で仕入れたんだ。新鮮だよ。まだ奥にあるんだ、
上がっていいの選んでいってよ。」

普段スーパーでしか買い物しないので、そんなものなのか、わからなかった。



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