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藤の舞
第18章 人工受精
妻から、帰ってくるまで待っているとメールが来た。

ここで彼女の存在がバレて、自分や彼女が不利になることは避けたかった。

ホテルを出てから食事もせずに家に帰る。

中途半端に遅く、腹が減っていたが、彼女との為と思えば、重い足取りでも家に向かった。

玄関を開けて驚く。

“親友“に初めて会った時を思い出した。

妻は、全裸で正座し三つ指をつき、玄関の上がり口でひれ伏していた。

「大変申し訳ございませんでした。」

主がそういうことを望むのか、
いや“親友“も前の主に躾られたのだから、
SMの世界ではこれが常識なのだろうか…

ノーマルな俺に通用すると思っているところが腹立たしい。

「飯はあるか?」

イライラして乱暴な口をきく。

「あなた召し上がって来られたのでは?」

「なんであいつが『せんせぇ』で俺がただの『あなた』なんだ?

あいつの前では、俺を『新しいお客様』と呼んだぞ?
あいつの為にか?

元々、主人なんだから、『ご主人様』くらいで呼ばれていいだろう?

俺もお前のことは『奴隷』として飼ってると思うことにするよ。呼び名は『おい』だ。わかったか?

おい、飯はないのか?」
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