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泡のように
第18章 17.
「そうかも知れないね。バカみたいだよね。学校で、先生とあんなことして」
 
 木戸は何の迷いもなくしばらく私の身体を凝視していた。
 いつの日か木戸がこっそり撮影した、秋芳先生に胸を触られている私と、今ここにいる私を重ねていたのかも知れない。
 素直すぎるのはバカの最大の短所とも言える。

「どうして私ってこんななんだろうね」
 
 木戸に尋ねたって無意味なことなのに、本音が口をついて出た。
 木戸の華奢な手が私の髪に触れたのは「性分ってやつじゃねぇの」ってセリフと同タイミングだった。

 私の髪を梳く骨ばった華奢な指先は、無抵抗をいいことに胸元にかかった毛先まで流れ、そして最終的に私のおっぱいに触れた。

「八田先生も妹がこんなんだって知ったら、悲しむだろうな。なぁ、秋芳のこと黙っててやるから、1発ヤラせてくれよ。いいだろ?」

 おっぱいを触る反対の手でマスクを顎まで引き下げた木戸の顔は、細い目と同様に、細い鼻と細い唇をしていた。
 私の唇にキスをした香水臭い細身の男は、お兄ちゃんの前でもこんな意地悪な笑みを浮かべていたのだろうか。


 唐突に教室のドアが開き、これといって特徴のない中肉中背で中年の、見るからに真面目そうな女性教師が入ってきた。その顔は生徒同士のキスシーン、しかも胸を揉みながら、を唐突に目の当たりにしたせいで、愕然と歪んでいた。

 木戸はすぐに細い腕を引っ込めると肩をすくめて「ちぇっ。シケたわ」とぶつくさ言いながら、元の席へ戻っていった。
 
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