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泡のように
第38章 37.
 泣くなよ、とキム君が言う。
 秋芳先生っていい先生じゃん。
 俺もあんたと同じで3年間部活で世話になったからさ。
 あんな顔してるけど中身乙女でさぁ、優しいじゃん。
 だからあんたも先生を好きになって付き合って、ガキができたんだろ?
 なら泣くなよ。泣いたらガキが可哀想だよ。
 ほら、オンマが言ってたぜ?
 母と子は一心同体だから、妊娠中に母が悲しむと子まで悲しい気持ちになるってさ。
 俺さー。山岸さんのことずっと好きだったからさ。
 なんか色々あんだってのは野球部の奴らから聞いて知ってたけど。
 でもそんなことより、あんたが最近、俺とクリスマスに試合観に行ったときよりよく笑ってんの見て、よかったなーって思ってたんだよ。
 だから泣くなよ。
 そんな顔で泣くなよ。
 あんたのこと、3年間見てたからわかるんだよ。
 キモイのは百も承知だよ。
 あんたのためじゃなくて俺が心残りしたくねぇから言ってるんだよ。
 山岸さんのこと見てたからわかるんだ。
 いや、ほんとはなにもわかってねーのかも知んねぇけど。
 でも、山岸さん。
 卒業するから泣いてんじゃないってのは、俺にだってわかるんだよ。
 迷うなよ。
 秋芳先生は俺たちによくそー言ってハッパかけたんだぜ。
 弱いチームだったけどさ。
 迷うなよ、強くなれよ。
 母になるなら、強くなれよ。
 山岸さん、強くなってくれよ。
 迷わずに生きてくれよ。
 そしたら俺もよーやく山岸さんのことフッきれるよ。
 告白もしねぇでフラれたあと山岸さんにずっと何も言えねーでいた、つまんねー片思いしたってこと、綺麗に忘れられるよ。












「山岸さん!」







 ざわざわ話し声が響く教室に、ワンピースタイプの礼服に身を包んだ担任が息を切らしながら飛び込んできた。





「ちょっと、山岸さん、すぐ来て!」




 言われるがまま担任の背中に続く。
 担任は廊下を競歩しながら「今お兄さんが来て、あなた全然家に帰らないからって心配したお兄さんが」と私を叱るように述べ、駆け込んだ職員室で左右を見回し、アアッて悲鳴を上げた。
 いつもの一番奥の日当たりの良い机に、先生の姿はなかった。


 
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