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第25章 怒　IKARI

　華は散々に私を殴りつけたあと、まだ全裸のままの私をベッドの上に押し倒し、今度は靴を履いたままの足で何度も私のことを蹴りつづけた。
　そしてそれにも疲れてか、ようやく大人しくなったのちに床にへたりこんでから、乾いたトーンで華は言った。

　「お父さん、ごめんね。痛かったでしょ…」

　「い、いや…大丈夫…だ」
　「そう？」

　華は靴を脱ぐとベッドの上に乗ってくる。そして私をまたぐように覆いかぶさると、両手を私の顔の両脇につき、その顔をぐっと寄せてきた。

　涙は枯れ、表情も失われていたが、顔と眼は真っ赤に充血したままであった。

　「……」

　何も言わずに、じっと私の目の中を覗きこむその様子は、こちらの心の中を見透かそうとしているかのようだ。
　私はといえば、心に深く刻み込まれた恐怖感に未だ握りこまれたままで、目を逸らすことも出来ず、鼓動がどんどん早くなっていくのを感じていた。

　「いっぺん……死んでみる？」
　「えっ！？、ええっ…」

　「…冗談だよ。」

　表情が失われた顔から紡ぎだされる言葉からは、その本気度合は読み取れない。冗談だと言われても、それで心が安寧になることはなかった。