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§ 龍王の巫女姫 §
第10章 春節の夜

水鈴はこの一時、隣に炎嗣がいるのも忘れてふらりと前へ出た。


「……」


溢れる人が交わる道に、ぽつんと、加わる。


道のど真ん中で立ち止まっているのは彼女ぐらいだから、通行人は迷惑そうだ。



「おい 早く帰るぞ!」

「お前んちの父ちゃん怖いからなー」


水鈴の胸下を駆け抜ける少年たち。

遅くなった帰りを親に怒られると、まとまって夜道を急いでいた。


ドンッ


「──っ」

「つーッ、痛ってぇ…」


よそ見しながら走っていたひとりの男の子が、なかなかの勢いで彼女にぶつかった。


よろけた水鈴と
尻餅をついて転んだ男の子。


「だ…大丈夫?」

「あー ッ…服また汚しちゃった」

その少年は、自分のお尻をパタパタはたきつつ立ち上がった。

水鈴は思わず謝っていた。


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