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§ 龍王の巫女姫 §
第10章 春節の夜

「春聯…?」

「春節を祝う対聯( ツイレン )だ。これは…二つの福が同時に来るという意味だな、悪くない出来だ」

説明してやった炎嗣だが

明らかにピンときていない水鈴の表情に目をおとして、舌を小さく打った。


「──…まさか、春節を祝ったこともないのか」


「だってそんな事、村の人は何も…っ」


「無知にも程がある…!」


春節とは、この国では一年を通して最も盛大に祝われると言っても過言でない。


それを知らないとは…流石と言うべきか。


「…来い」

炎嗣は彼女の腕を掴み引っ張った。


何処に行くのかと問う彼女を無視して、はぐれないよう道を横断する。


碁盤の目状の、都の道々──

炎嗣がさらに奥へ二本進み抜けると、そこには立派な大路が現れた。


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