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§ 龍王の巫女姫 §
第10章 春節の夜


「……ここは髪飾りも扱っているのか。…水鈴!」


「は、はい?」


「もっと近付け。笠が邪魔でよく見えない」


店棚の商品に関心を移した炎嗣には、餃子の件など煩わしいだけ。


「お前の髪色には…どのような髪飾りが映えるのだろうな」


彼女の銀髪を人目にさらすわけにいかないから、笠は外さずに、炎嗣が腰を屈めて覗きこんできた。


少し下からのその視線は新鮮で

水鈴は半歩、後ずさりながら思わず顔をそらした。


炎嗣は手にした簪( カンザシ )を彼女の頬の横に近付けて、その色合いを見比べている。



「こんな事をしていて…ッ 楽しいのですか?」

「…そうでもない。だがこうでもして見立ててやらないと、お前は自分で欲しい物を教えないだろう」

「だから!わたしはこの様な…っ」

「黙れ。騒がしい──」



“ もう!彼は何を考えてるの!? ”


騒がしいもなにも
そうさせているのは炎嗣自身だ。

そんなに市中を見物したいのなら、ひとりか…もっと愛想のある他の妃嬪を連れてくればいいのに。


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