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§ 龍王の巫女姫 §
第11章 残酷な好機

涙を滲ます水鈴の目の奥は熱くて、口許を覆う手は震えが止まらなかった。

殺すことはできない。

でも…だからと言って、ここから逃げだすという選択肢はなかった。

何もせずに逃げることを彼女自身が許してくれなかった。



「……、水 鈴…? 」



その時、寝台上の炎嗣の首が動いた。


燭台を手に数歩ほど離れた場所に立つ水鈴は、身をこわばらせる。




「……っ」


「…何処にいる……早く、戻れ…」


彼の声にはいつもの張りが無く、寝起きらしいこもった音だった。


部屋が暗いためよく見えない。隣の寝椅子から消えた水鈴を探して、炎嗣は頭を動かした。



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