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§ 龍王の巫女姫 §
第11章 残酷な好機


「今にも折れそうな…か細いこの腕に、こんな物は重くて仕方がないだろうな」

突然 手首を掴まれて
それでも彼女が抵抗する気にならなかったのは…

手首を掴んだその行為が、彼自身を守る為ではなく、他ならぬ水鈴の為であったからだ。


「命令だ、今すぐ、捨てろ…」

「……でもっ」

「──…捨てろ」


有無を言わせぬ口調はいつもと同じ。

寝起きで掠れた彼の声が、ゆっくりと語りかけてくる。



「そんな物を、お前が持つ必要はない…」


「でも そんな事をしたら…っ」


「…構うな、捨てていい」


「……!!」



もう限界だった。


燭台が指の間を滑って床に落ちる。


鋭い針が床に敷かれた絨毯をひっかき、そして破いてしまう。一度小さく跳ねて転がったそれはすぐに止まった。


持つものの無くなった腕は驚くほどに軽く──

手を引かれるまま彼女は寝台に上がり、炎嗣と向き合うように座った。



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