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§ 龍王の巫女姫 §
第14章 湯に溶ける甘い蜜

けれど水鈴にはそんな理由…頭によぎりもしなかった。

「今はここにいても平気なんですか?」

平気、とは公務のことについてだ。


「…知らん」

「知らんって……っ」

「今回は湯治( トウジ)が必要だと押しきって来た。背に負った怪我が痛んで仕方がないと、公務に集中できないと、臣下どもに駄々を言ってな」


“ 怪我が痛むなんて、なんて大嘘を… ”


怪我のせいで公務ができないなんてあり得ない。彼はとっくに元気だ。そのことを水鈴は身をもって知っているのだから…。

同じことを恐らく臣下達も思っただろう。
けれど彼等は言いくるめられてしまったのだ。


責任感があるのかないのか…

分からないけれど、念願の休みに極楽気分の彼を前にすると何も言えない。


「……」


それに

休みがほしいと駄々を捏ねる炎嗣の姿を勝手に想像すると、可笑しくて仕方がなかった。



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