この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
贄姫
第5章 伍
「いいか、椿。
妖を使役するならば、精気を与えなくてはいけないんだ」
「精気? なにそれ」
「魂とも呼ぶようなもので、気力のことを指す。
見てろ」
そう言うと、周は息を手のひらに吹きかけて
コロコロと両手のひらを擦り合わせた。
それを凝視していると、その手のひらから
光り輝く球が現れる。
「わ、なにそれ」
「これが精気だ。
これを、使役する妖には与えないと、彼らは死んでしまうんだ」
「それ、あたしにもできる?」
「椿は不器用だからな…。
お前ができなくても、俺が護ってやるから大丈夫だ」
「それ、できない時って他の方法ないの?」
「あるぞ。空気をこうして膨らますように精気を具現化したり
呪符に込めたり…」
そっちの方が難しくない?
椿は口を尖らせた。
「あとは、男女の営みもそうだ。
気を巡らせることができて、手っ取り早いと聞く」
「いとなみ?」
説明をしようとして、周がハッとした顔をした。
そして、気まずそうにそっぽを向く。
「忘れろ。椿には必要ない」
「なにそれ、教えてよ!」
周に掴みかかったのだが、周は苦笑いして椿を避けた。
そのうちな、と呟く。
クシャクシャと椿の頭を撫でた周の顔が
どこか悲しかったのを思い出す。
知らなくていいんだ、と
周が小さく呟いたのが、耳に残って離れない。

作品検索
しおりをはさむ
姉妹サイトリンク 開く


