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贄姫
第1章 壱


「わかってるならいいんだ」


「小さい頃から変なものが見えまくってたら
そりゃ、言われなくても気づくに決まってるでしょ」


上等だと言わんばかりに周は頷いた。


「じゃあ、なんで俺がお前の護衛であり婚約者であるかわかってるよな?」


「あんたの力が強いからでしょ?」


「そんなのは当たり前だ。
だが、それだけじゃない」


周の言葉に椿は眉根を寄せた。


「どういうこと?」


「お前が贄姫で、呪いを身体に受けているからだ。
いつ妖に襲われるかもわからん。
陰陽師の娘というだけで、妖からの恨みは多い。
加えて、妖たちにとって贄姫という存在は、さらにお前を危険にするからだ」


あまねはいったん息を吐いた。


「椿。お前は、その身体の刺青のせいで
妖から命を狙われるんだ、17の誕生日以降、ずっとだ。
妖にとってお前は都合がいいんだ。
だから俺が護っていた。
だけどな、今以上に危険になったら、もう俺でも対処しきれない。
だから、儀式を受けて、守護者となるものをお前につけなくてはいけないんだ。
そして、お前はその守護者に、最後は命を差し出さなくてはいけない」


「…なんでそんな大事なこと黙ってたわけ?」


椿が知っていたのは、刺青に呪いがあること。
そして、それを解くために、両親は全国を行脚しているということ。


守護者の話も、命を差し出す話も
今初めて聞いた。
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