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贄姫
第1章 壱


「……わけわかんないってば!」


イライラしてつい強い口調で怒鳴る。
それに一瞬たりとも怯まない周の瞳が
あまりにも透明すぎて椿の方が息をのんだ。


「…ずっと解く方法を探し、お前を護ってきた。
だけど、もう限界だ。
この家や俺たちだけではお前の命を守りきれない。
それほどまでに、この呪いが強いんだ」


強い怒りと苛立ちを抱え込んだ周の声に
椿は震えが来た。
よくない事が起ころうとしている。
しかも、自分の身に。


頭は理解できないが
それが起こる空気を感知した身体に
ぞくりと寒気が走った。


「なんで…?」


わかっているけれど、
分からないふりをした。
そうすれば、今までと同じ日常に戻れると
戻りたいとそう思った。


「お前の命を守るための、守護者をつけるぞ。
そうでなければお前は妖に襲われて死んでしまう。
死にたいわけじゃないだろ?」


そう締めくくる周の顔はいつになく真剣で
椿はぼうっとそのきれいな顔をみた。
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