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忘れられない指
第3章 恋のすすめ
ガランガランとドアのカウベルが鳴って客が入ってきた。
何度か顔を合わせたことがある、カップルだった。
目が合うと、こんばんは、と声をかけてくれてから
壁際のテーブル席へと2人は座った。

マスターはカウンターから出てきて
注文を聞きながらおしゃべりを始めた。

私はそんな時にマスターの姿をじっくりと眺めている。
ある意味無防備なその姿は、私のハートをちょこちょこくすぐる。
はらりと落ちる前髪、袖をまくる仕草、男として意識するに十分値する慎介さん。
私のこと子ども扱いばっかりしてるけど、
私の方はしっかり男を感じているのに・・
まったくそれには気づいてくれない。


1人グラスを揺すっていると、戻ってきたマスターが声をかけてくれた。

「咲子ちゃんも彼氏でもつくったら?」

突拍子もない、とはこのことだ。
なんでいきなりそんな事言うのか。
何も口にはしていないのに、喉の奥がゴボゴボと音を出した。
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