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忘れられない指
第3章 恋のすすめ
「なぁんですか?いきなり!
 突然すぎてむせちゃいましたよ、もう!」

おしぼりを口に当て、まだゲボゲボいっている私に大丈夫?と声をかけながら
丸めた背中をさすってくれた。

・・わぁ!はじめてタッチしてくれた・・

手の温もりをいつまでも味わいたい、としばらくカウンターに突っ伏していた。
が、すぐにマスターの手は離れていってしまった。

「ごめんごめん、いえね・・」

マスターは極小の声で私に囁く。

「あのお客さんたち見てたらさ、咲子ちゃんにも早くあんなふうに
 幸せになってもらいたいなって、まぁ親心みたいなもんよ」

見上げたら、すっごく優しい目で私を見ているマスター。
大人の落ち着き、色気っていうんですかね、こういう雰囲気・・
そうしみじみ感じながらありがとう、と頭を下げた。
下げながら・・好きな人はいるんだけどな、とわざとつぶやいてみた。
でもそのつぶやきは全く相手にされなかった。
というよりは、次に鳴ったカウベルの音でかき消されてしまったのだ。
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