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忘れられない指
第17章 終わるための罪

結局その夜は史彦も来なくて、
私と孝明と時折マスターが加わって、静かな時間が過ぎていった。

口当たりのいいカクテルは、マスターが気をつけろと言った通り、
私をいつもより酔わせた。


「咲ちゃん、けっこう酔ってるでしょ?そろそろ帰ろう、ね?」

心配そうに顔を覗き込まれ、素直に首を縦に振った。


「じゃあマスター、おやすみなさい」

おやすみ、と慎介さんの声を背中に浴びながらドアを開けると、
冬の凍てつく風に吹かれ孝明と2人、キュッと体を縮こまらせた。



空気が冷たいだけで、見慣れた商店街が別の色に見える。
頬をかすめる意地の悪い風に足も止まりがちになる。
それでなくてもふらついた足なのに。

その私の腕をとって、孝明は支えてくれている。
以前はよくそうしてもらった。
でも凌空と付き合いだしてからは、孝明は並んで歩調をあわせてくれるだけだった。
よほどひどくよろめかない限り、彼が私に触れることはなくなった。

今夜、久しぶりに彼の手の温もりを感じている。
そこに意識が集中すると、しだいに酔いも醒めていった。
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