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忘れられない指
第5章 思いもよらぬ・・
電気の紐を掴もうと、手が宙を舞う。
だが勢い余ってか、そのまま床に膝をついてしまった。

「ほら咲ちゃん、しっかり・・」

その声は、やけに耳に近いところで聞えた。

少し頭をもたげると、なにかにあたった。
柔らかい・・髪・・?
孝明の頭だ。
私の耳にあたっている。

ゆっくりと、顔を後ろへ向けようとした時、
後ろからたくましい腕が私の両胸を包んだ。
一瞬、息が止まった。

・・孝明さん・・

呼びかけたくても声が出ない。
体も動かない。
小さな震えだけが、彼に伝わっていく。
それに合わせるかのように、私の体を力いっぱい抱きしめて、耳に唇を押し付けてくる。

なにか言うのだろうか・・
でも吐息しか聞こえてこない。
しだいに荒くなる呼吸しか、聞こえてこない。

私の体は・・反応しだした。
このまま・・彼に抱かれても・・いい・・・

力を抜くと、それが合図だと思ったのか
この体を向き直らせ、激しく唇を吸い始めた。

徐々に隙間を作る私の唇のその奥に、温かな舌がゆっくりと入り込んできた。
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