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秘蜜に濡れて
第12章 曖昧な予感
ライブ後の撥春からの連絡は遅かったり、無かったり。

それは疲れもあるだろうが、毎回の反省点やらミーティングやら打ち上げやらで時間を取られている様だった。

「岩崎さんに甘えれば良かったのに」

ニコルが頬杖をつく。

「仕事、あるし」

「金曜日の最終で十分でしょ?」

「邪魔…したくないんです、きっと集中してるはずだから」

「あと何日で帰って来るの?」

「来週の火曜日には」

ニコルはあいりの代わりに溜息をついた。

逢いたくてどうしようもなくなる時がある。

5分でいいから…あらゆる交通手段を帰り道で考えてしまう。

でも…。

残業を無意識に増やして、なるべく忙しくしていたい。

疲れて帰ってぐっすり眠ってまた明日。

余計な考えなんて入り込む隙間を与えない様に。

それでも…淋しくなったらあの鍵を使う。

会議があって、珍しくカチッとしたスーツを身に纏っていた。

ジャケットだけ椅子に掛けると、撥春のベッドに倒れ込んだ。

薄く薫る撥春の残り香に胸が締め付けられる。
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