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秘蜜に濡れて
第7章 夢から醒めたら
岩崎を見つめるあいりの視界がぼやけていた。

皮のジャケットの筈なのに、カットソーを着ていて、今より髪も短く、サングラスもない。

穏やかな表情で笑う嘉紀がダブって見える。

「顔色が悪いな、スタジオの熱気に充てられたんじゃないのか?」

嘉紀が気づくと、撥春は覗き込んだ。

「大丈夫?」

ふわふわする足元と視界になんとか頷くあいり。

「今日はこれで終わりだろ?帰っていいぞ」

「はい、失礼します」

ドアへとあいりを促す。

挨拶しようとあいりは振り向いた。

「嘉紀さん」

にっこりと微笑んだのはあいりであって、あいりではなかった。

「…奈帆…?」

「あいり?岩崎さん?」

撥春の声にあいりはハッと自身を取り戻す。

「…?し、つれいします」

バタンとドアが閉じると、怪訝な顔でドアを見つめる嘉紀。

スマホを取り出すと電話を掛けていた。
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