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秘蜜に濡れて
第10章 suger&spice
「そんなに可愛いのか?」

「そうですね」

「は!言い切りやがって、これで美紅の出番は無しだな」

撥春は罰が悪そうに苦笑する。

「お前が追い掛けてんの?って、そんなの頼んで来るぐらいだから愚問だな」

口元が緩みっぱなしの撥春に、博嗣はいいんじゃねぇのと背伸びをした。

「じゃあ、俺はもう行くわ、そのうち会わせてくれよな」

「是非」

「御馳走様」

にっと歯を見せて、博嗣は帰って行った。

会う理由なんて本当は要らないんだけど。

ツアー前で疲れてるだろうからと、あいりはなかなか会おうとは言って来ない。

もう少し我儘を言って欲しいし、積極性も欲しい。

「積極性、か…」

脳裏を過るのは羞恥心を抱えながらも、撥春を襲おうとしたあいりの表情。

「何エロいこと、想像してんだよ!」

バシッと丸めたフリーペーパーで頭を叩く健一。

「とっととリハに戻れ」

「その前にメールさせて」

「2分で戻れよ」

頷いた撥春はスマホを取り出して、笑みを浮かべながらメールを送った。

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