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秘蜜に濡れて
第10章 suger&spice
頃合いをみて撥春はあいりの手を引いてその場を後にした。

会計を済ませて、店の外でタクシーを捕まえる。

絡まる指に会話など必要なかった。

「もう日付変わってるし」

タクシーのカーナビの表示は0時を2分過ぎていただけ。

「竜がなんだかんだ引き止めてたくせに、いつの間にか居なくなってたな」

「秋月さん、モテますから」

「あれは絶対俺たちを妨害してた」

窓ガラスに肘を付いて拗ねる撥春。

あいりは酔いも手伝って、撥春の肩に頭を預けた。

「会いたかったです」

「お預けくらってたのは俺の方なんだけど?」

あいりはくすりと笑う。

「酔ってる」

「酔ってません」

「笑うところじゃないし」

「はい」

それでもあいりは笑みを浮かべたまま、繋いだ手にもう片方の手を重ねた。

タクシーはマンションの地下駐車場へと滑り込む。

エレベーターに乗り込むと、撥春は待ち切れず唇を重ねた。
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