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Love adventure
第13章 背中にささやく「すき」
「……西本祐樹……19▽▽年3月14日生まれ……血液型不明、神戸市出身、愛称は『西君』」

 つまり彼は26。ほなみよりも2つ年下という事になる。

「ピアノを3歳から習い、音楽大学へ進みピアニストを目指すが……
 偶然渋谷で再会した同級生の根本(ドラム)、野村(ベース)、神田(ギター)と意気投合し、前身となるロックバンド『不思議の森』を結成し、都内の路上やライヴハウスで精力的に活動する……
 プロデューサーの『志村 賢一(けんいち)』に路上ライヴで見出だされスカウトされる。
 20▽▽年……『フェーマスレコーズ』からメジャーデビューを果たす……」

 ほなみは、画面の文字を目で追いながら、ぐるぐると考えた。

(このまま結婚生活を続けていけるのかしら。生まれて初めて身も心も烈しく、西君のような男の子に愛されて、もう元の自分には戻れないのかも知れない……)

「だからって、どうしたら良いのーー」

 とりとめ無く自問自答を続けても、ブラックホールのように抜け出せなくなってしまうだけだ。
 急に瞼や身体が重くなる。時計を見ると夜中の3時を過ぎていた。

 ――もう、眠らなくては。

 なるべく音を立てないように、ベッドの彼の隣に潜り込んだ。
 静かな息を立ている背中にそっと唇を当て「……好き……」と、小さく、小さく囁いた。

 背中が僅かにぴくりと動いたように見えたが、それはほんの一瞬で、また規則的に静かな呼吸を繰り返し始める。
 ほなみは、恐る恐る背中から彼をそっと抱きしめた。

(目を醒ましてしまったらどうしよう……)

 と思いながら、触れずには居られない。
 背中から伝わる鼓動を感じながら、瞼を閉じた。
 彼の静かな呼吸のリズムに合わせて息を吸ったり吐いたりしてみると、まるでふたりがひとつになったかのような幸福な錯覚をしてしまう。

  智也とは、こんな風に一緒に眠ったことはなかった。
 誰かと朝まで一緒に眠った最後の日は、いつだっただろう。





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