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ジェミニの檻
第1章 ふたつのくちづけ
ドアに凭れて六花が立ち、由岐がドアに手をついて被さった。

僅かな隙間に、六花のシャンプーであろう香りが鼻をくすぐった。

20センチ以上の身長差、由岐の位置からは六花の睫毛の影が見て取れた。

メイクしているのかというくらいのナチュラルさに、薄紅色の頬、ぷっくりとした唇。

白く細い首筋と、栗色の髪、華奢な身体つきに邪な考えが広がっていく。

駅は由岐が下りるのが先だった。

「次だね」

「家まで送る」

「え、いいよー」

「送る、送らせて」

半ば強引に押し切って、更に4つ先の六花の最寄り駅まで足を伸ばした。

「時間、まだいい?」

六花が頷くと駅前のベンチに並んで腰掛けた。

「松永くん?」

六花が覗き込むように振り向く。

「り、六花」

さっきまで池内さんと呼んでいたのに、急に名前で呼ばれ、その真剣な眼差しに六花の鼓動が高鳴る。

「は、はい」

「俺の彼女になってくれませんか?」


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