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ジェミニの檻
第10章 流星
最後の夜がやってくると、あの星空見たさに足早に山道を登る。

同じであった、違う表情を見せる星空。

「六花」

耳元で小さく名前を呼んだのは志貴だった。

静かにその輪を離れていく。

「志貴…?」

木々を抜けただけなのにシャッターの音も、話し声からも遠ざかった。

開けたそこには静けさに囲まれた一画だった。

志貴は芝生の様な背丈の短い草の上に寝転んだ。

「いいの?」

「俺は静かに見たいの」

六花も並んで横になる。

遠くで虫の音が聞こえるくらいで、志貴の呼吸する音がこの世にはたった2人しかいないのではと錯覚させた。

星空を見つめたまま、志貴の手がぎゅっと六花の手を握った。

「流れ星、見えないね」

緊張と沈黙に耐え兼ねた六花は口を開く。

「流れ星って…消える前の最後の光なんだぞ?」

「そうなの?」

「そうなのって、何だと思ってたんだよ?」

「なんか…誰かに逢いに行ってるのかなって」

「お前と由岐みたいに?」

皮肉っぽく揶揄う志貴に、六花は眉を顰めた。

「志貴、私は…由岐と志貴を…」

「六花って、星の名前だって知ってた?」

六花の言葉を遮って志貴は星空を指差した。

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