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ジェミニの檻
第11章 Subtle shift
志貴の手が六花の頬をなぞり、首筋を滑り落ちていく。

一時間で由岐は帰ると言っていた。

それが定かではないけれど、連絡がないところを見れば然程遅れる事もないはず。

「六花は、すぐ顔に出る」

「私は…志貴のこと…」

カラカラの喉に言葉が引っかかる。

「ただいまー!」

志貴は目を伏せると立ち上がってキッチンへと向かった。

「おっ、志貴ちゃんと作ってるな!六花、課題どう?」

「うん…教えてもらったし、リーダーはもう終わる、よ」

「まじか!って俺も渉に数学の課題コピー貰った」

「え?ズルい!」

六花はテーブルの下でスカートを握りしめながら、努めて自然に振る舞った。

肉じゃがが出来上がると、志貴はそれ以外にも手早く味噌汁と副菜を用意し、2人の課題を監督した。

「俺の人生に指数関数もそのグラフもいらねー!」

「人生にいらなくても今いるんだよ」

コツコツとシャーペンで机を叩き由岐を急かす。

「あー、もう全然頭に入らないから、先に飯にしよう」

「お前腹一杯になったら頭回らなくなるだろ?文章題が終わったら飯だ」

「鬼っ!悪魔っ!」

「なんとでも言え、他人事の顔してるけど、お前は出来たのか?」

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