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ジェミニの檻
第13章 noreason
宗治は無駄に愛想を振りまいていて、呼子に捕まってはひらりひらりと笑顔で対応している。

それでも、左腕には麻央が絡み付いていたし、それを振り払う素振りも宗治にはない。

「ごめんねー、俺、彼女一筋なんだよね」

胡散臭い笑顔にえれなは拳を握って走り出していた。

「えれなっ!」

一瞬、由岐の方を向いて確認すると、えれなを追って走り出した。

渡り廊下を渡り切ると、階段に座り込むえれなの目にはいっぱいの涙が溜まっていた。

「えれな…」

「何で…私が泣くのよ…何で…涙が出るのか…わかんないっ…!」

六花は隣に座ると、渡り廊下の向こうから宗治が人差し指を口に当ててしーっと六花を諭しているのが見えた。

「何なの?誰にでも笑ってるし…誰にでも優しいし…何考えてるか全然わかんないっ…!」

「えれな…宗治さんの事す…」

「嫌いっ!大っ嫌い!あんなヤツ…最低っ!ばかっ!信じられないっ!消えちゃえっ!!」

罵詈雑言にも宗治は微笑んで、うずくまるえれなを見つめていた。

「それってさ、好きの裏返し、だよね?」

ばっと顔を上げたえれなは宗治を睨みつける。

「私の事、好きなんでしょ?」

「うん」
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