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ジェミニの檻
第14章 真昼の雨音
鞄を置いてキッチンに入っていく志貴。

「手伝うよ」

慌てて荷物を置いた六花の足元に倒れた紙袋から中身が散らばる。

「何、それ?」

卵を取り出していた志貴が目に留めたのは、文化祭の思い出の品になったメイド服。

「縫ったのは私たちだから、記念にって渡されたの」

「エプロンをついてるなら、それで手伝って」

「え?」

「着替えてよ」

顎で服を指すと何時もの有無を言わさない瞳で見つめていた。

何度も志貴を確認する様に服と志貴を交互に見つめても、志貴は促すだけだった。

「なんだ、膝丈か」

「当たり前でしょ?」

隣に立ってオムレツ用に卵を溶く。

トーストを焼き、手際よく志貴が焼いたオムレツがその上に乗せられると、アイスティーが横に並んだ。

当たり障りのない会話とお腹がいっぱいになると、片付けもそこそこに六花の荷物を手にして階段を上がっていく。

「志貴、私…」

「帰りたい?」

志貴の質問の仕方はズルい。

いつだって答え辛い尋ね方だ。

「喫茶店でなんて言って客引きした?」

「…お帰りなさいませ、ご…しゅ…じ…様…」

「ふーん、誰でもご主人様って呼ぶなんて、躾が足りないんじゃない?」
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