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ジェミニの檻
第15章 rouge
「…っか、六花!」

えれなに呼ばれてはっと顔を上げた。

「大丈夫?最近ぼーっとしてるけど…なんか悩みでもあるの?」

土曜日の夕方に差し掛かったこの時間のバイトは手空きになる時間帯だった。

今もえれなの手には宗治が淹れたカフェオレのカップが二つ握られていた。

ふわりと香ばしくも甘い香りが辺りに漂うと、えれなは改めて六花を見上げた。

由岐と引き合わせてくれたのはえれなだった。

そのえれなに別れ話の相談など、どんな顔をしてどう説明すればいいのか六花にはわからなかった。

しかも別れたい理由が志貴を好きになったなんて。

「エースと上手くいってないとか?」

カウンターから笑顔で覗き込む宗治。

「まさか!由岐は六花のために練習の時間帯を見直した位だよ?」

「それ、六花ちゃんが頼んだんじゃないなら、お仕着せだよねー」

「宗治!兎に角六花は愛されてんの!ね?」

えれなが振り返ると宗治の表情から笑みが消え、曖昧な返事を零す六花を見つめていた。

駅でえれなと別れた直後、宗治からメールが届いた。

「忘れ物なんてしたっけ?」

思い当たらない事もなく、店へと踵を返す。

「お、お帰り〜」

控え室でコーヒーを飲んで寛ぐ宗治が、自分の前にある椅子を指して座る様促した。
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