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ジェミニの檻
第16章 Crafty race
無意識の呼び名にいつから由岐は気付いていたのだろう。

六花ですら、今の今迄気付けなかったのに。

「寂しかったから?志貴は優しかった?」

由岐はそっと六花の髪を撫でる。

「俺の代わりにしてた?」

「ちがっ…」

由岐も志貴も双子とはいえ一人の人だ。

似ているだけで、別物だとその言葉すら喉を通らない。

「由岐…」

チラッと由岐の視線が志貴に向いた気がした次の瞬間、髪を撫でていた手がぐっと後頭部を引き寄せ唇を奪われた。

「…ンンッ…」

押さえ付けられるように頭を動かす事が出来ず、由岐のなすがまま唇をこじ開けられ、由岐の舌が差し込まれる。

口蓋を舐られ、歯列をなぞったと思ったら、舌を絡み取られて絶妙な強さで吸い上げられる。

「…ふ…ぅん…」

粘膜に媚薬でも含まれているのではないかと思い違うほど、思考が白くボヤけた向こう側に飲まれていく。

繋がれた右手の感覚すら薄れて、鼓膜を擽る水淫の音だけが大きく響いていた。

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