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ジェミニの檻
第4章 ビタースィート
ゆっくりと駅のホームへの階段を昇る。

行ったばかりの電車、次が来るまで空いてるベンチに六花を座らせる。

解けた手に何故か淋しいと感じた。

スマホの初期設定の呼び出し音が鳴る。

「もしもし、由岐?」

その名前に心臓が止まったかのように息苦しくなる。

「まだ外、うん、もう家?ああ食うよ、わかってる」

他愛のない会話は次の電車が滑り込んで来ると同時に終わった。

手を引いて六花を立たせ、再び手を繋いで電車に乗り込んだ。

帰宅ラッシュなのかやたらとサラリーマンが目立ち、車内はぎゅうぎゅうとまではいかないものの、それなりに混んでいた。

ドアのすぐ脇に志貴が立ち、ドアに凭れて六花が立つ。

ちらっと志貴を見上げると、窓の外を見つめていた。

綺麗な顎のライン、涼やかな目元は髪に少し隠れている。

通った鼻筋、柔らかそうな口唇。

ガタンッとカーブで電車が揺れると、志貴の胸の中に身体が収まる。

「ごめ…」

志貴は外を見つめたままだ。
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