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ジェミニの檻
第4章 ビタースィート
しゅんと下を向いた六花と隣のサラリーマンの間に自分の体を押し込む。

「な、に?」

不思議そうに見上げると志貴は六花の耳元に近づいた。

「後ろのオヤジがお前の胸をガン見してた」

囁いたそれに六花はえっと声を出しかけて手で抑えた。

志貴は外を見てたんじゃなくて、ドアに映ったそれを見ていたのだ。

「ありがと…」

単純に嬉しくて、思わず笑みが浮かんでしまう。

志貴はその笑みに応える様に手に力を込めた。



志貴は自分の駅を通り越して、六花の駅まで送った。

ホームの端で鞄を受け取る。

なかなか握った手を離せない。

「…今日は…ありがと…」

「バージン奪ってくれて?」

ボッと顔を赤くして食ってかかる六花。

「違…っ!さっき!電車で!…庇ってくれて…」

「お礼は?飴玉以外ね」

ポケットを探る六花にデコピンを食らわす。

「痛い〜!」

「名前、いってみ?俺の」

「松永…しき…」

「よくできました」

ぽんぽんと頭を撫でて、志貴は反対のホームへと背を向けて帰って行った。
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