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初花
第5章 白絹
珊瑚は七宝のひとつ。

紅のものは 身体を強く保ち
邪眼による災いや悪魔や怨霊を防ぐと云う






これを贈ったとき 私自身にさえ
まだかたちとしては掴めていなかった恋心を
龍が 知るはずもなく、

己の身柄への手付けの様に贈られた装飾品を
身に付ける気にはなれぬまま
此処へ持参したと云うし


私としても、色なり造りなり
好む処ではなかったのだろうと思って居た








それを何故 今、身に付けるかと問う私に



「わたしを抱いておられるとき、
殿の腕は この手では解けぬほどに
力に充ちて 堅いのですけれど。

決して 傷付けられたことはなく
それどころか、、」




言葉を捜す様に 幾度か瞬くのを凝視め
白い頬を手に包めば


「貴子さまが教えてくれたのです、
紅珊瑚は お守りにつかうものだと。。」



繋がりのない言葉を 紡いで、彼は微笑んだ。













「この歳迄、恋など知らず生きて来たが
私は 其方が愛おしい。

想いを告げる事もなく、契りを請うでもなく
鳥籠に閉じ込める様に 此処へ置いた事を
ひそかに悔いていた

… 許して呉れるか」




他者に 許しを求める事は
屈辱である筈と 思っていたが

涼やかに明るい月の光を浴び頷いて
私を許す龍、その髪にくちづけながら

かつてないほどに 心が凪ぐ









愛とは 形なく、けれど 何より尊い。
他に願う物は 無いほどに。














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