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好きにさせて
第16章 現実
「俺がなんで元気ないんか
ちょっと分かったわ」
「?」
「茜が
結婚を躊躇う
本当の理由というか
ためろうてしまう気持ちを
分かってたつもりでおったけど
全然分かってなかって
凹んだんやと思う。
なんも
分かってやれてのうて…
恥ずかしいわ」
「そんなことないよ、尚は」
茜は
急いで否定しようとしたけど
その言葉を
最後まで聞かないまま
俺は
大事なことを茜に伝えた
「ええねん。
ほんま、そうやから。
せやけどな
変なこと言うようやけど…
これでほんまに
茜と一緒に苦しめるなぁ思て
なんや
嬉しいんや」
「え…」
「茜が泣きたい時
茜とおんなじ気持ちで
俺も泣けるし
嬉しい時は
おんなじだけ嬉しい
せやろ?」
「…尚…」
「なんや?」
「私には…
もったいないくらい
いい人」
「そんなことない。
茜の方が
俺にはもったいないで」
「尚…」
「ん?」
「ずっと側にいてね…」
「当たり前や」
その日の夜
ベットの中で
身体を寄せ合い
何度も何度も
キスをしながら
色んな話をした
茜の親父さんの足の具合や
お互いの先祖の墓の場所
両親に兄弟は
おるんかどうかとか
俺の家に行く時の
手土産の話まで。
それから
俺らが今一番楽しみにしてる
引っ越し先の話
俺と茜は
ほとんど寝れないまま
朝を迎えていた
「運転、気をつけてね」
「大丈夫や、慣れてるから。
茜はしっかり昼寝せいよ」
「うん、じゃあ
いってらっしゃい」
「おう、ほな
いってくるわ」
けど俺も茜も
昨日の夜より
清々しい気持ちやった
もうどうなってもええ
どうなったって
俺と茜の関係は
何一つ変わらへんと
分かり合えたからや