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孤城の中のお姫様
第2章 山川静香(やまかわしずか)〜都内有名私立大文学部4年年〜
ほどなく、車は岬の小高い丘の駐車場に着いた。

車は2台停まっているだけだった。

「あっ、ありましたね。自販機。何を買って参りますか?」

「あれCコーラよね。じゃあ、アクエリレモンね。」

「かしこまりました。少々お待ちください。」

スラックスにワイシャツ姿の相沢圭司が、自販機に向かって、走って行き、急いで買って戻って来た。

「お待たせしました。冷えてますよ。」

「ありがとう。」

私は一口二口飲んで、喉の渇きを癒した。

相沢圭司は車外で待っている。

「お待たせ。で…どこなの?海なんか見えないけど…。」

「あそこから、ちょっと木道を歩くと展望台があるんですよ。」

「えっ、歩くのぉ?それは家を出る時に言ってよねぇ…私リゾートサンダルで来ちゃったじゃない。」

「それなら大丈夫です。少しだけですから。女性のハイヒールでも行ける、木製デッキの道ですよ。」

「そうなの?それなら連れていって。」

相沢圭司はドアを開けると、私の手を取って、座席から外に導いた。相沢の手に掴まったとき、私の心が少しトキメイた。

若い男性と一瞬でも手を繋ぐことなど、中学高校と女子の一貫校だったから、6年間普通なら有り得なかった。身近にいる男性と言えば、相沢圭司は別として、学校の先生くらいのものだったから。
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