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孤城の中のお姫様
第2章 山川静香(やまかわしずか)〜都内有名私立大文学部4年年〜
私は一応部屋に戻り、テレビをつけた。番組に興味があったからではない。ただ単にこの家の静寂が嫌だった。

外からは、僅かに田園から、蛙の合唱が聞こえてきた。

部屋はエアコンが効いているから、窓を開ける必要はなかったし、寒冷地で夏でも冷房は昼間しか必要のないこの地なのに、私のお部屋は、機械警備のために窓を開けることができなかった。

私は部屋の電気を消した。それからテレビも消した。なぜなら、相沢圭司に気取られないように、離れの様子を見たくなったからだ。きっと向こうも、私のいるお部屋は見えるから、気にしているに違いないと期待していた。

離れは、通常よく見られるハウスメーカーの企画品の住宅だった。4人家族なら余裕で生活できる2階建ての家だ。

下にキッチン、リビング、和室、水まわりがあり、2階には大小3部屋があった。母屋と比べると、普通の大きさの家なのに、すごく小さく感じられた。

今、私も、2階にいながら、見下ろすような状態だ。それくらい母屋は大きく、広かった。

私のいる2階だけでも、12畳間が4部屋、それに廊下とトイレ。襖を外せば、48畳間に広げられるくらいなのだから、1階はキッチンや食堂やお風呂があり、広い玄関もあり、もっと大きかった。

私は当初離れに泊まることを希望したが、離れは、新聞記者や秘書の使うところで、さまざまな書類や、荷物があるし、父の許可が下りないだろうから、駄目だと山本さんから、言われていた。

山本さんは、その離れにほとんど常駐して、リビングにデスクを置き地元秘書の仕事をしていた。

その離れの2階の一部屋に明かりが燈っていた。相沢圭司のいる部屋だ。

遮光カーテンの隙間から明かりが洩れていた。

1階はシャッターは閉められていた。もう時間的に山本さんは、帰宅しているはずだった。

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