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星と僕たちのあいだに
第9章 涙のゆくえ
 
自己分析に一応の答えを出して、麻衣は思いきり伸びをした。
ベンチから跳ね上がるようにして立ち上がると、両手をひろげ全身に陽差しを浴びた。
徐々に、けれどもしっかりと空気を暖める陽光が、過去の自分を氷解させていくようで心地よかった。

『私にだって、ちゃぁんと役割がありますよ』

そうつぶやきながら、ところどころに落ちる木陰をぴょんぴょんと飛び越えながら遊歩道を歩いた。

離れたくずかごに向かって立ち止まり、野球のピッチャーのようにかまえてから、ジュースの紙パックを投げた。
紙パックは力なくかごの手前に落ち、あぁ、惜しいと顔をゆがめた。

拾った紙パックをくずかごに放り込んでエントランスへ向かうと、噴水の向こうから両手を振り回して駆けてくる子供に気づき、麻衣は、『あ!』と声を漏らした。

『直樹クン!』

地面を蹴り立ててやってくる直樹の向こうには、父親の姿が見えた。
直樹は麻衣の両足を抱えるようにしがみついて、腿のあいだに顔をうずめた。

『あらぁ、久しぶり。元気だったの?』

麻衣の声が聞こえていないかのように、直樹はごしごしと額をこすり続けた。

『すみません、すみません』

と小走りに近づいてくる滝沢直也に、麻衣はにこりと会釈した。

『その節はお世話になりました。
 こちらの勝手な礼状にご返事までいただいて、
 ホントにありがとうございました』

折り目正しくお辞儀し、頭をあげた滝沢の笑顔に、麻衣はどこかしら見覚えがあった。

『あ、いえ。
 わざわざお礼をいただけるなんて
 思ってもいませんでしたから。
 こちらこそ気を使わせてしまいました』

頭を下げた麻衣の足元で、直樹が首をそらして小きざみに跳ねていた。
前と同じように、抱いてほしいと手を伸ばしている。
自然な流れで直樹を抱き上げると、幼児特有の無雑な体臭が、弱い味覚をともなって麻衣の鼻の奥に浸透した。
しっかとまといつく直樹に、乳房が押され反発する。
その圧迫感と息苦しさが妙に麻衣を切なくさせた。


 
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