この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
星と僕たちのあいだに
第9章 涙のゆくえ
 
渡瀬は焦れたように早苗の手をとった。

『違うよ早苗、そんなつもりじゃないよ。
 そういうことじゃないって。
 お袋も今回のことですごく心配してて、
 それで、そばにいてやった方が
 いいんじゃないかなって思ったんだよ』

早苗は渡瀬の手を取り直して両手に挟み、

『聞いて』

と、うつむいた。
  
『浩ちゃん……あたしね、
 物事はなりゆき通りにしかならないって思ってたの。
 うまくいかないことばっかりで、
 くじけて、転んで、痛い思いしても、
 これは、なりゆきだから仕方ないんだって……。

 でも、いろんな人に出会って、
 そういう考えじゃいけないなって思うようになった。

 なりゆきにあらがって、
 その上で大切な何かを守ろうとすることが、
 どんなに人の救いになるかってことがわかったの。
 なりゆきに任せないことで、
 生まれるものもちゃんとあって、
 それは、なりゆきでは絶対に手にできない。

 たとえ結果が同じであっても、
 人を大切に想って為すことが、
 なりゆきを意志的なものに変えるんだって、
 なんとなく、そんな気がするの。

 だから、
 あたしは浩ちゃんに謝んなきゃいけないって
 ずっと思ってた。
 浩ちゃんと一度そんなことがあって、
 あたしは回れ右して、
 浩ちゃんのところに収まろうとしたの。
 でもそれが物事の処し方として
 決して正しいとは思えなかった。

 心を空っぽにできなかったの……。
 あたしがそうなのを、
 浩ちゃんは見抜いてたはずよ。

 腹に一物たずさえた、そんな女を愛せる?
 あたしはそんな自分を愛されたくない。

 隠しごとを持ったものどうし愛し合っても、
 いつかきっと、どちらかがそれを支えきれなくなる。
 あたしは浩ちゃんとそうなりたくないの……』

早苗の話しぶりに、作為はまるで感じられなかった。
とつとつと述べられた早苗の思いは、飾りなく清廉(せいれん)で、いちずに真を獲得せんとする、まともな女性の述懐として渡瀬の胸に響いた。

受け入れることのできる理想と感情とのはざまで、早苗は自分に潔癖であろうと食いしばっている。
そんな早苗を、渡瀬はこれ以上苦しめたくなかった。


 
/381ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ