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退魔風紀 ヨミ ~恥獄の学園~
第1章 ヘイワード国際学園の怪
 倉庫に辿り着いた詠は心に芽生えた焦燥を押さえつけ、中に呼びかけた。

「ギニー? 退魔風紀よ」

 返事はない。

 嫌な予感がする。手を掛けると扉は簡単に開いた。中は真っ暗だ。

「ギニー……?」

 依頼人の名を再び呼ぶ。やはり返答なし。だが、小さな呻き声が聞こえた。

「ウ……ク……ンン……」
「エニワン・ヒア (誰かいるの) ?」

 英語で呼びかけてみる。

「ンン……」

 変わらず呻き声だけが響く。

(……危険!)

 これまでの経験が詠に警告を発し、全身の肌が粟立つ。

「燐!」

 詠が小さく印契を切って護呪を唱えると、ほのかな青白い燐光が彼女の身を包み、辺りを照らし出した。

「これは……」

 倉庫の奥に半裸の少女が吊るされていた。無惨にもスカートを剥ぎ取られ、ショーツ一枚の長い脚を晒し、乱れたブレザーの下で、前をはだけたブラウスからたわわな乳房が露わとなっている。

 その腕は胸を覆う術なく頭上に掲げてひとまとめに縛られており、手首の所からロープが天井へと伸びている。やっと爪先立ちができる姿勢で、彼女は身をくねらせて呻いていた。北欧系だろうか? 童顔にかかる乱れたアッシュヘアー。そして、透き通るような白い肌の持ち主だ。

「ン……フゥ……ン、ンン……ァ……」

 猿ぐつわの奥から漏れる呻き声は苦悶のものというより、切ない感じでどことなく艶めかしい。

 一瞬それが気になったが、とにかく救助が先と詠は少女に駆け寄った。

「もう大丈夫! いま助けるからね」
「クフゥン……ンン……」
「……一体誰がこんな酷いことを」

 ロープで吊るなど、魔の仕業らしくない。彼らは人間の道具を使わない。
 と、いうことはつまり――

「僕だお……」

 背後からの突然の答えに、詠はハッとして飛び退いた。
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