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第9章 君ノ笑顔

「はぁ。お前はまだ子供だったから…、理解出来ないままだったんだな」

「な、何…っ!?何の事だ…っ!?」

「何も知らないままの方がいいと、黙ってた俺も悪い…」


黒埼さん？


黒埼さんの口振りからして、桜木さんのお父さんの自殺には違う理由がありそうだった。

桜木さん本人も知らない真実。


でも、私は知ってる。

黒埼さんが何か隠し事をしたり嘘をつく時は疚しい事があるからじゃない。




誰も傷つけたくないから嘘をつく。

私と、私の両親の借金の時もそうだった。

真実を知ったら、私が傷つくかも知れないと思ってずっと、何年も真実を隠し続けてくれた。



自分の為に、嘘をつくような人じゃない…。




黒埼さんは桜木さんの目を見ながら話し出した。

桜木さんも知らなかった真実を。






「あの当時、お前の父親のオモチャ会社は確かに不景気だった。
レトロなオモチャばかり扱ってたから。
世の中はテレビゲームの普及がしだしてたし、積み木やピースパズルの売れ行きは激減してた」

「けど、日本のレトロなオモチャは一部の海外では人気だった。
だから、お前の父親に海外への出店を依頼したんだ。
支度金やその他の費用は全てこちらが持つ、という条件で。
今で言うネットでの通販サイトとして」

「海外進出は成功。
お前の父親は莫大な売上金が手に入れた。
会社も大きくなり社員も増やし、売上金でより上質なオモチャを作り出せるようにもなった」


ここまでは桜木さんに聞いてた通りだ。

海外進出は初めて聞いたけど、会社が大きくなった事や財を築いた事は桜木さんの話通りだ。