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BLACK WOLF~crime~
第9章 君ノ笑顔



黒埼さんじゃなかった…。

黒埼さんが直接手を下した訳じゃなかったんだ。

嬉しいはずなのに…

違うとわかって喜ぶべきなのに…

桜木さんの姿を見てると素直に喜べない。


「舞に渡したメモの名前を見た時、すぐに気づいた。
お前の父親の葬儀に参列した時に俺を睨むお前の目は、忘れたくても忘れられなかった。
俺を恨んでる、というのもわかってた。
俺がもっと早くお前の父親の負債に気づいていればこんな事にはならなかった…」


そっか。

だから黒埼さん、桜木さんの名前を見た瞬間にあんなに動揺してたんだ。

だったら、どうして私に教えてくれなかったの?

桜木さんの事や、桜木さんのお父さんの事。


「う、嘘だ…、親父が…っ」

「嘘だと思うなら当時の社員に話を聞いてみるか?当時の裁判や弁護士とのやり取りを記録した書類も資料も全て残ってる」

壊れたからくり人形のように踞ったまま何かをぶつぶつ呟く桜木さんの姿。


助かったはずなのに、心が痛い。

どんな理由があったにしても、こんな結果は悲しすぎる。


「確かに俺にも責任はある。
しかし、舞を餌にしたのは少々やり過ぎだ」


桜木さんに背中を向けると、私の体を抱えてその場を後にしようとする。

お姫様抱っこをされて、この異様な空間から私を助け出してくれた。




「ど、して…。話してくれればよかったのに…」

「名前を見ただけじゃ本人かどうかはわかんねぇ。同姓同名の可能性だってあるだろ?」





自分勝手で、意地悪な狼。

けど、私はいつもこの人を信じてしまってる。

この人の胸に帰ってしまう。




『━~━~━!!!!』

遠くからパトカーのサイレンも聞こえて来ている。










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