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第10章 最後ノ恋

車を走らせる黒埼さんの様子が何かおかしい。

嫌味を言ったり意地悪を言ったり、大胆な事をしでかすところはいつもの黒埼さんだけど、何かいつもと違う。

何だか、いつもより雰囲気が柔らかい。


「く、黒埼さ…」


「俺はお前との将来を考えてる」



将来…？

将来って、何のこと？

黒埼さんの様子がおかしい。

しばらくすると木々の間から大きな屋根が姿を現した。

黒埼さんの邸が見えた時だ。











「舞、結婚しよう」














━━━━━━━━━━っ？

え…？

今、何て…

黒埼さん、今何て言ったの…？

黒埼さんの口から出た一言。

その言葉は…





いつかテレビドラマで見た、いつかは言われて見たいと思った台詞だ。

女性なら誰もが憧れる言葉。

その言葉が、今黒埼さんの口から発せられたけど

誰に言ったの？

結婚しようって、私に…？


黒埼さんが、私に…？


呆気に取られた私は思わず呆然と黒埼さんの方を見つめた。

黒埼さんは相変わらず車を走らせている。





「く、黒埼さ…ん？」

「口にするのは最初で最後だ」





車は門をくぐり、庭の方へと進んでいく。

庭を抜ければこの外車を保管する大きなガレージ。

けど、そのガレージに浸く前に大きな庭に車を駐車させた。

ここは黒埼さんの庭なんだからどこで駐車しようが構わないのだろうけど。


ギィッ、とサイドブレーキを引き車は一時停車。


でも、車内の空気が何だか気まずい。