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快楽の奴隷
第10章 幻のいる間
『知り合いのマンションに空きがあり、そこを管理するような立場で住む』
半分本当で半分嘘の理由を説明した。
まるで囲われる愛人みたいだ、とか知り合いというものは何者だ、と父は激しい剣幕で反対したが、母はそれを宥める。

「そんなに反対するなら私も花純と暮らしますから。お父さんはどうぞここに一人で住んでください」

母のその一言の援護射撃が功を奏した。

「勝手にしろ」

こうして父は認めてはいないけど一人暮らしは許すという曖昧なかたちに落ち着いたのだった。
それは父も花純がもう子供ではないことを思い知らされた出来事でもあった。


多少の罪悪感はあったけど、今となっては決断してよかったと花純も思っている。
高梨との繋がりが身体だけではなくなった。
大切にされ、愛されてると実感する。
とはいえ、まだ引っ越しをしてから高梨がやって来たことはない。
メールや電話でのやり取りで、彼が執筆で忙しいことを理解していたから我慢していた。
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