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快楽の奴隷
第11章 文士と絵師
「そこをなんとかっ!! ボクからもお願いするっス!!」
「無理ですよっ!」

森崎は両手を合わせて花純を拝み倒す。

「俺抜きで勝手に話を進めるな。駄目だと言ってるだろうが」

高梨は険しい表情で編集者を睨んだ。
「じゃあ先生もお願いします!」「じゃあってなんだよ」という二人のやり取りを花純は見ながら、考えていた。
高梨の著作は数々あるが、彼女が名作と感じるものは代表作の『嗤う人形』などの一部を除き、ほぼ全て立山が表紙を担当したものだった。

『立山さんが描く表紙は、ただ綺麗なだけじゃない……高梨さんの描く倒錯した世界を一枚の絵で表している……妖しく美しい、高梨さんの世界感を見事なまでに……』

花純は無意識のうちに立山の指に視線を落としていた。
作家とはいえパソコンを使っている為にタコのない高梨と違い、立山の指にはペンダコがぷっくりと浮かんでいた。

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