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快楽の奴隷
第17章 闇と光
「男は女を我が物にするために労を費やす。そして女を得て安らぎを覚える。それが正しいあり方なのかもしれない。だがな」

突如立山の声色は厳しいものに変わる。
鋭い視線は花純の瞳の奥を睨み付けていた。

「芸術家は違う。安らぎを得てはいけないんだ」

立山は力を籠め、パキッと音を立てて手の中のクルミを割った。

「常に自分を追い込み、苦しみ、己の中の弱さや穢さを見詰めなくてはいけない……安らぎは心をなまくらにする」
「心を……なまくらに……」
「そうだ。クリエイティブな活動の為には常に精神は尖ってなくてはいけない。心が乱れ、焦り、罪の意識に苛まれる。何かを訴えたくて、己の心を浄化したくて、しかしそれが赦されず。その想いは、苦悩は、作品に刻むしかない」

砕いたクルミをテーブルの上に無造作に投げる。細かな破片がテーブルに散らばった。

「花純……お前は高梨に安らぎを与えすぎた……傷を癒しすぎた……そしてあいつを求めすぎたんだよ」
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