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美しい狼
第6章 月夜の狼
夜中に
急に目が覚めて

お水を飲もうと
長い廊下を歩いていると

要様の部屋から
灯りが漏れてることに気づきました

電灯の灯りにしては暗すぎる……
あっ
そう、今日は満月
漏れているのは月明かり

夜風は冷たい季節
風邪を引かないように
布団をちゃんと被っているか
確認しようとしたところ

出窓に腰掛け
月明かりを背に
寂しげな要様がいらっしゃいました

その様子は
とても儚げで
要様が消えてしまいそうに思われて
胸の奥が
きゅぅと締め付けられるような
切なさが込み上げていました

私は
考えるよりも先に
身体が動いて

要様をぎゅっと
抱きしめていました

「怖い夢でも見ましたか?」

驚いた様子の要様でしたが
次第に
私の腕の中で
甘える要様がおりました

「夏目が、
 要様を哀しませる全てのものから
 守って差し上げます
 慌てて大人にならなくて
 いいんですよ
 要様、私にもっと甘えて下さい」

背中をポンポンと
赤ん坊をあやすように
さすって差し上げました

「夏目…
 俺はお前を失うのが
 一番怖くて哀しいよ……」

「要様………
 大丈夫です。
 夏目は要様のお側を離れません。
 決して居なくなったりしません。
 だから、心配しないで下さい
 そんなお顔をなさらないで……」


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