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第1章 if

貴方は帰る人なんだ。
帰る場所も、
帰る人も決まった人。


正直も罪だわ。
嘘はもっと罪深い。

悔しいわ‥‥
私じゃないのね。

不倫にifなんて話は‥‥
聞くもんじゃない。

私と貴方の未来が見えた。

「真実、
口紅塗ったらキス出来ないよ」

貴方は笑う。

「そうね」

貴方は私をギュッと抱きしめる。

このまま時が止まればいいのに‥‥


赤いルージュの唇は、
カッコイイ女を演じようとする‥‥


「終わりにしょう」

私は貴方の腕の中で呟いた。


本音はね‥‥
別れるなんて死にたくなるほど辛い。
でもきっと‥‥
その辛さは未来に持ち越さない。


私も帰れる場所が欲しいから。
もう、不倫はおしまい。
不倫を終わりにする人生を選ぶわ。


もし、
私が未来に妻と呼ばれる日が来たら、
貴方の妻のように、
ワイシャツを綺麗にアイロンをかけ、
家庭の香りを背負わせて、
笑顔で見送り、
嘘に目を瞑る
出来た女になるわ。



貴方は頷く。
無言の沈黙はさよならを認めた二人の決意。

私は貴方の瞳を見る。

最後くらいはいい女でいさせてよ。

涙が溢れる前に、
部屋を出る。

戻らない扉を開けて、
私は未来に歩き出す。



END